この記事の要点
- カスタマージャーニーマップのテンプレートは「横軸=購買フェーズ × 縦軸=顧客情報軸」のマトリクスが基本形です
- 目的別に4タイプ(認知拡大型・購買促進型・LTV向上型・BtoB商談型)から選び分けるのが実務の鉄則です
- ペルソナとマーケティングファネル、KPIとセットで運用してこそ施策に活きます
テンプレートをダウンロードしたものの、空欄を前に手が止まる。あるいは作ったマップが社内で共有されないまま、フォルダの奥で眠っている。そんな悩みを抱える中小企業・スタートアップのマーケティング担当者は少なくありません。本記事は「テンプレートが欲しい」だけでなく、「実務で使い倒したい」方に向けて、CMO視点での顧客接点設計まで踏み込んで解説します。
麻生 諒也株式会社ウォーカンド 代表取締役
学生時代よりSEO・SNS事業を立ち上げ、個人事業主としてマーケティング領域に従事。個人と並行し、新卒でWEB広告代理店に入社。ブランド領域の広告プランナーとして、提案から運用まで一気通貫で担当する。同領域にて準MVP、MVPを受賞し、独立。2025年、株式会社ウォーカンドを設立。
1. カスタマージャーニーマップのテンプレートとは?基本構造と必須項目
カスタマージャーニーマップのテンプレートとは、顧客が認知から購入・継続利用に至るまでの行動・感情・課題を時系列で可視化するためのひな形です。横軸に購買フェーズ、縦軸に顧客情報(行動・思考・感情・タッチポイント・課題・施策)を配置したマトリクス構造が基本形になります。
テンプレートの基本構造:横軸(フェーズ)×縦軸(顧客情報)
標準的なテンプレートは、横軸が「認知→興味関心→比較検討→購入→継続・推奨」の5フェーズ、縦軸が「行動・思考・感情・タッチポイント・課題・施策案」の6項目で構成されます。マス目の数は5×6で30セル。これがカスタマージャーニーマップの最小単位です。
業態によっては「オンボーディング」「解約予兆」など独自フェーズを足したり、項目数を増減したりして構いません。
テンプレートに必ず入れるべき7つの項目
どのテンプレートを選んでも、最低限押さえたい縦軸は次の7つです。
- 行動:顧客がそのフェーズで何をするか(例:レビューサイトを3つ比較する)
- 思考:何を考えているか(例:本当に効果あるのかな)
- 感情:ポジティブ/ネガティブの感情曲線(例:期待→不安→納得)
- 期待:顧客が無意識に抱いている「こうであってほしい」という基準(例:導入後すぐに使いこなせてほしい)
- タッチポイント:接触チャネル(例:Instagram広告、指名検索、店頭)
- 課題・障壁:前進を妨げる要因(例:価格情報が見つからない)
- 打ち手・KPI:解決施策と測定指標(例:価格ページ改善/CVR)
特に重要なのが感情曲線と課題です。感情が最も落ち込む地点こそ、施策の優先投資先になります。
「課題(障壁)」が“妨げるもの”を描く項目であるのに対し、「期待」は“満たしてほしいもの”を描く項目です。両面から埋めることで、単に障壁を取り除くだけでなく、顧客が本当に求めているものに応える打ち手が見えてきます。
ペルソナ・マーケティングファネルとの関係
カスタマージャーニーマップは、ペルソナを主語にして、購買の旅路を描いた地図です。ペルソナがなければマップの粒度が曖昧になり、ファネルと紐づけないとKPI設計に落とし込めません。実務では「ペルソナ→カスタマージャーニーマップ→ファネル→KPI」の順に作るのが基本です。
2. カスタマージャーニーマップを作成する4つのメリット
カスタマージャーニーマップは「作ること」自体が目的ではありません。実務に落とし込むと、次の4つの効果があります。
① 顧客視点でボトルネックを可視化できる
自社の思い込みではなく、顧客の行動・感情・期待を並べることで、「どこで顧客が離脱しているか」「どこに不満が溜まっているか」が一枚絵で見えるようになります。
② 部門を横断する共通言語になる
マーケ・営業・CSはそれぞれ異なるKPIを追いがちですが、マップを共有することで「今どのフェーズの顧客の話をしているか」を全員が同じ地図の上で議論できます。
③ 施策の優先順位・予算配分の根拠になる
限られた予算をどこに投じるべきか、感情曲線の落ち込みや期待とのギャップが大きいフェーズから逆算して判断できます。
④ 効果の薄いタッチポイントを見極められる
すべてのタッチポイントに均等にリソースを割くのではなく、顧客の行動に実際に影響を与えているタッチポイントとそうでないものを切り分け、無駄な施策を整理できます。
3. 目的別に選ぶ4つのテンプレート
カスタマージャーニーマップのテンプレートは、目的によって4タイプに分かれます。自社の事業フェーズと最重要課題に合わせて選ぶことが、テンプレート選定の出発点になります。
①認知拡大型
重点:認知〜興味関心
KPI:リーチ・指名検索数
BtoC新商品向け
②購買促進型
重点:比較検討〜購入
KPI:CVR・客単価
EC・小売向け
③LTV向上型
重点:購入後〜推奨
KPI:チャーン率・NPS
SaaS・サブスク向け
④BtoB商談型
重点:リード〜受注
KPI:商談化率・受注率
BtoB全般
①認知拡大型(BtoC・新商品ローンチ向け)
新商品をどうやって知ってもらうかが勝負どころのため、認知〜興味関心フェーズを厚めに描く構造です。タッチポイントはSNS、検索、口コミ、店頭サンプリングが中心。KPIはリーチ、指名検索数、第一想起率を置きます。
②購買促進型(EC・小売向け)
比較検討〜購入フェーズに重点を置き、行動を細かく分解するのが特徴です。「商品ページ閲覧」「レビュー比較」「カート投入」「カート離脱」「再訪」といった粒度で分けます。KPIはCVR、客単価、カゴ落ち率です。
③LTV向上型(SaaS・サブスク向け)
購入後〜継続利用〜推奨のフェーズを長く描くのがLTV向上型です。重要項目は「オンボーディング体験」「最初の成功体験」「解約予兆サイン」。KPIはチャーン率、NPS、アップセル率です。
④BtoB商談型(リードナーチャリング向け)
BtoBでは、担当者・部門責任者・経営層など複数の関係者が意思決定に関わるため、それぞれの視点を分けて行動と課題を埋めるのがポイントです。フェーズは「リード獲得→育成→商談化→受注→継続」。マーケから営業への引き渡し基準を明文化する場としても機能します。
4. そのまま使えるテンプレート
ここでは、コピーしてそのまま使える空欄のテンプレートを用意しました。表計算ソフトやスライド、ホワイトボードツールなど、お使いのツールにあわせて貼り付けてご利用ください。
基本テンプレート(5フェーズ×7項目)
| 認知 | 興味関心 | 比較検討 | 購入 | 継続・推奨 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 行動 | |||||
| 思考 | |||||
| 感情 | |||||
| 期待 | |||||
| タッチポイント | |||||
| 課題・障壁 | |||||
| 打ち手・KPI |
すべてのマスを一度に埋める必要はありません。まずは自社にとって特に重要な1〜2フェーズだけでも埋めてみると、着手のハードルが下がります。
💡 すべてのマスを一度に埋める必要はありません。まずは自社にとって特に重要な1〜2フェーズだけでも埋めてみましょう。
テンプレートの構造は分かっても、実際に自社のペルソナや顧客データを当てはめて埋めていく段階でつまずく方は多いです。Walkandでは、カスタマージャーニーマップの作成から運用定着までのご相談を承っています。
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ウォーカンドでは戦略設計から実行・改善まで一気通貫で支援しています。
5. カスタマージャーニーマップの作り方【5ステップ】
カスタマージャーニーマップは、①目的設定→②ペルソナ定義→③フェーズ分解→④顧客情報の埋め込み→⑤施策・KPI落とし込み、の5ステップで作成します。所要期間は2〜4週間が目安です。
ステップ1:目的とゴールKPIを決める
最初にやるべきは「このマップで何を解決したいか」を1文で定義することです。「半年以内にECのCVRを1.2%から1.8%に引き上げる」程度の具体性で言語化しましょう。目的が曖昧なまま着手すると、全フェーズを浅く埋めただけの資料になり、意思決定に使われません。
ステップ2:ペルソナを1〜3名に絞り込む
埋める項目は、属性(年齢・職業・家族構成・年収)、抱えている課題、主な情報源、購買動機と決め手、購買を妨げる不安です。原則は「1ペルソナ=1マップ」。複数ペルソナを1枚に混在させると、行動も感情も平均化されて使い物にならなくなります。
ステップ3:購買フェーズを業態に合わせて分解する
標準5フェーズをベースにしつつ、業態固有のフェーズを足します。BtoBなら「情報収集」「社内での検討」、SaaSなら「無料トライアル」「オンボーディング」「定着」、ECなら「再訪」「リピート購入」。最終的に7〜9フェーズに収まる程度が扱いやすい範囲です。
ステップ4:顧客の行動・感情・タッチポイントを埋める
仮説だけで埋めると、マップが「社内の思い込み」になってしまいます。既存顧客への定性インタビュー、カスタマーサポートの問い合わせログ、検索クエリの分析、アクセス解析の行動データなど、実際のデータを組み合わせてください。
ステップ5:課題と打ち手・KPIを紐づける
最後に、各フェーズの課題に対して「打ち手×担当×KPI×期日」を書き込みます。「比較検討フェーズの離脱率35%を、3か月で25%まで下げる。担当はマーケ、施策は比較表ページの新設」といった粒度まで落とすことが、形骸化を防ぐポイントです。
6. よくある誤解・失敗パターン
カスタマージャーニーマップは、型だけを真似てもうまく機能しないことがあります。特に多い4つの誤解を押さえておきましょう。
誤解①:購入がゴールだと思っている
顧客の目的は「購入」そのものではなく、購入した先の「利用」や「解決」にあります。購入フェーズで終わるマップは、その後の継続利用・解約防止・推奨という重要な機会を見落とします。
誤解②:顧客の行動を平均化して描いてしまう
アクセス解析の平均値だけを頼りに作ると、実在しない「平均的な誰か」の行動になってしまいます。1人の具体的なペルソナを思い浮かべながら描くことが原則です。
誤解③:企業側の願望が混ざってしまう
「こう行動してほしい」という期待が無意識に反映され、都合の良いマップになりがちです。あくまで顧客起点で描くことを意識してください。
誤解④:KPIを設定しない、または放置する
マップを作ること自体が目的化し、測定指標が曖昧なまま運用されるケースです。定期的に実データと突き合わせて更新する仕組みがなければ、マップは形骸化します。
7. 業態別の記入例
自社版を作る際の下敷きとして、業態別の記入例を紹介します。
BtoC(ECサイト)記入例
ペルソナは「30代女性・共働き・時短志向・コスメ好き」。新しいオールインワン美容液の購入までを描きます。
| 認知 | 比較検討 | 購入 | 継続 | |
|---|---|---|---|---|
| 行動 | Instagramで広告を見る | 口コミサイトで3商品比較 | 公式サイトで定期購入 | 2回目以降の使用 |
| 感情 | 少し気になる | 本当に効くか不安 | 安心・期待 | 満足/物足りなさ |
| 期待 | 自分に合う商品を見つけたい | 正直な口コミを知りたい | 定期解約が簡単であってほしい | 効果を早く実感したい |
| タッチポイント | SNS広告 | 口コミサイト・YouTube | 公式EC | 同梱物・メルマガ |
| 課題 | 記憶に残らない | 成分の違いが分からない | 定期解約が不安 | 使い方が分からない |
| 打ち手・KPI | 口コミ強化/指名検索 | 成分比較ページ/回遊率 | 解約条件の明示/CVR | 使い方動画/継続率 |
図|BtoC記入例の感情の起伏
感情が最も落ち込む「比較検討」フェーズが、施策の優先投資先になります
BtoB(SaaSサービス)記入例
ペルソナは「中小企業のマーケティング担当者・40代・予算の決裁も行う」。マーケティングオートメーションSaaSの導入までを描きます。決裁者と実際に使う担当者、それぞれの視点を分けて書くのがポイントです。
| 情報収集 | 比較検討 | 社内での検討 | 契約・定着 | |
|---|---|---|---|---|
| 行動 | 「MA 比較」で検索 | 3社の資料を請求・デモ視聴 | 稟議書の作成・上申 | 初期設定・運用開始 |
| 期待 | 信頼できる情報源が欲しい | 自社規模に合う機能を見極めたい | 上司を説得できる根拠が欲しい | サポートを受けながら定着させたい |
| 感情(決裁者) | 失敗したくない | 機能と価格に迷う | 説明責任に不安 | 成果が出るか心配 |
| 感情(利用者) | 使いこなせるか不安 | 操作性が気になる | ー | 覚えることが多い |
| タッチポイント | 検索・比較メディア | 営業・ウェビナー | 費用対効果の試算資料 | サポート・ヘルプサイト |
| 課題 | 違いが分からない | 導入事例が不足 | 費用対効果の根拠が弱い | 初期設定が複雑 |
| 打ち手・KPI | 比較記事の充実/流入数 | 事例コンテンツ/商談化率 | 費用対効果シミュレーター/受注率 | 初期設定サポート/定着率 |
無料テンプレートを使う際の注意点(Excel・PowerPoint・Miro)
ネット上には無料テンプレートが大量にありますが、ツールごとに向き不向きがあります。
- Excel/スプレッドシート:データ集計・KPI管理向き。定量分析と併用したいときに最適
- PowerPoint/Keynote:会議や部署横断の共有向き。視覚的に伝えやすい
- Miro/FigJam:チームでの共同編集向き。付箋ベースで仮説出しに強い
ダウンロードしたテンプレートをそのまま使うと、自社の業態に合わないことがあります。フェーズ数も項目も、必ず自社の購買プロセスに合わせてカスタマイズしてください。テンプレートは型紙であり、完成品ではありません。
8. 作成後、定期的に見直す
カスタマージャーニーマップは、作って終わりにせず、運用し続けることで初めて価値を持ちます。
顧客の行動は半年もあれば変わります。定期的に(目安として四半期に1回)、実データ(CVR・離脱率・NPS・顧客アンケート)と突き合わせて更新するのが鉄則です。運用を定着させるには、更新の担当者と確認するタイミングをあらかじめ決めておくことが欠かせません。「四半期初月の第2金曜に見直す」のように仕組み化しておけば、生きた資料として組織に根付きます。
自社単独で作るのが難しい、あるいは作ったマップが社内で使われていない、といった課題があれば、伴走型のマーケティング支援を活用するのも有効な選択肢です。Walkandは、顧客接点設計から施策実行まで、実務レベルで支援しています。
マーケティングの課題、抱えていませんか?
ウォーカンドでは戦略設計から実行・改善まで一気通貫で支援しています。
9. まとめ:テンプレートを「使えるCJM」に変える3つのポイント
カスタマージャーニーマップのテンプレートを実務で機能させるための要点を、最後にまとめます。
- 目的とペルソナを先に決める:何を解決するためのマップか、誰の旅路を描くのかを最初に確定する
- ファネル・KPIと必ず接続する:各フェーズの課題に「打ち手×担当×KPI×期日」を紐づけ、実行計画に変える
- 定期的な見直しで生きた資料にする:実データと突き合わせ、更新のタイミングを仕組み化する
まずは4章の空欄テンプレートをコピーし、自社にとって特に重要な1つのフェーズだけでも埋めてみてください。それだけで、テンプレートは「眠っている資料」から「使える資料」への第一歩を踏み出します。
マーケティングの課題、抱えていませんか?
ウォーカンドでは戦略設計から実行・改善まで一気通貫で支援しています。
よくある質問
カスタマージャーニーマップとカスタマーエクスペリエンスマップの違いは?
カスタマージャーニーマップは購買プロセスを時系列で可視化したもの、カスタマーエクスペリエンスマップは購買に限らず体験全体(利用前後の感情や満足度)を評価したものです。カスタマージャーニーマップが施策設計向け、CXMが体験品質の改善向けというイメージで使い分けると整理しやすいでしょう。
テンプレートは無料DLしたものをそのまま使っていい?
そのまま使うのは推奨しません。汎用テンプレートは標準的なフェーズ構成で作られており、自社の業態・商材・顧客特性に合わないケースがほとんどです。フェーズ数、縦軸項目、ペルソナを必ず自社向けにカスタマイズしてから運用に乗せましょう。
作成にかかる期間の目安は?
中小企業で2〜4週間が標準です。内訳はペルソナ定義に1週間、顧客インタビューとデータ収集に1〜2週間、マップ化と打ち手の紐づけに1週間ほど。1日のワークショップで一気に作る方法もありますが、1次情報なしでは仮説の域を出ません。
BtoBでカスタマージャーニーマップを作るときの注意点は?
意思決定関与者(DMU)を縦軸に追加することが最大のポイントです。担当者・部門責任者・決裁者で関心事や不安が異なるため、それぞれの視点で行動と感情を分けて埋めましょう。マーケと営業の引き渡し基準を明文化する場としても活用できます。
カスタマージャーニーマップとペルソナはどちらを先に作る?
ペルソナが先です。カスタマージャーニーマップは「誰の旅路を描くか」が決まって初めて成立します。ペルソナなしのCJMは主語のない文章のようなもので、感情も行動も平均化されてしまい、施策に落とせません。1ペルソナ=1マップを原則にしてください。
カスタマージャーニーマップをAI(ChatGPT等)で作れる?
たたき台の作成には有効です。ペルソナと目的を入力すれば、フェーズ分解や仮説の埋め込みは数分で出力されます。ただしAIの出力は一般論に寄るため、必ず顧客インタビューやアクセス解析など1次情報で検証・修正することが前提です。




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