この記事の要点
- マーケティングファネルは、見込み客が認知から購入に至るプロセスを段階分解したフレームワークで、1898年のAIDAモデルを起源に持ちます
- カスタマージャーニーとは見ている軸が異なり、ファネルは「量」の絞り込みを、カスタマージャーニーは「質(感情や理由)」を可視化します
- 「もう古い」と言われる理由がある一方、BtoBの長い検討プロセスや社内の共通言語として、今も有効に機能しています
- 2026年時点では、フライホイールやフリップ・ザ・ファネルなど、ファネルを補完する関連フレームワークとの併用が主流です
「マーケティングファネルって、もう古いんじゃないの?」。そんな声を耳にしたことはありませんか。あるいは、カスタマージャーニーとの違いを聞かれて、うまく答えられなかった経験がある方もいるかもしれません。
マーケティングファネルは、100年以上使われ続けているマーケティングの基本フレームワークです。この記事では、定義や提唱者といった基礎知識から、図で見る構造、カスタマージャーニーとの違い、「古い」と言われる理由とその是非、2026年時点の最新の関連フレームワークまでを整理します。読み終える頃には、このフレームワークを自分の言葉で説明し、実務に使いこなせる状態を目指します。
麻生 諒也株式会社ウォーカンド 代表取締役
学生時代よりSEO・SNS事業を立ち上げ、個人事業主としてマーケティング領域に従事。個人と並行し、新卒でWEB広告代理店に入社。ブランド領域の広告プランナーとして、提案から運用まで一気通貫で担当する。同領域にて準MVP、MVPを受賞し、独立。2025年、株式会社ウォーカンドを設立。
1. マーケティングファネルとは?定義と提唱者
マーケティングファネルとは、見込み客が商品・サービスを認知してから購入に至るまでの行動プロセスを、段階別に可視化したフレームワークです。ファネル(funnel)は英語で「漏斗(じょうご)」を意味し、口の広い入口から液体を注ぐと、出口では細く絞られて出てくる構造にたとえられています。認知した人が100人いても、最終的に購入するのは数人。この「絞り込み」を直感的に表現したモデルです。
提唱者は誰か
マーケティングファネルの起源は、1898年にセント・エルモ・ルイスが提唱した「AIDA」モデルにさかのぼるとされています。Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Action(行動)という、消費者の心理変化を段階的に表したモデルです。
このAIDAが持つ「段階を追うごとに対象者が絞られていく」という構造を、後年のマーケターが漏斗(ファネル)の形に重ねて可視化したことで、現在の「マーケティングファネル」という概念が形づくられました。100年以上前に生まれた考え方が、今もマーケティングの共通言語として使われ続けているのは、この構造そのものがシンプルで応用が利くためです。
なお、一般的に「マーケティングファネル」という言葉が使われるとき、後述する3種類のファネルのうち、パーチェスファネル(購買ファネル)を指すことが多いという点も押さえておいてください。
2.【図解】マーケティングファネルの3層構造(TOFU/MOFU/BOFU)
現代のマーケティングファネルは、TOFU(Top of the Funnel:認知層)、MOFU(Middle of the Funnel:検討層)、BOFU(Bottom of the Funnel:購買層)という3層で整理するのが一般的です。
図|マーケティングファネルの3層構造
段階が進むほど、対象者の数は絞られていきます
| 層 | 読者の状態 | 必要な情報 | 代表的なコンテンツ |
|---|---|---|---|
| TOFU(認知層) | 課題に気づき始めた段階 | 課題の啓発、全体像の理解 | SEO記事、SNS発信、広告 |
| MOFU(検討層) | 解決手段を比較している段階 | 選び方、比較の軸 | ホワイトペーパー、ウェビナー |
| BOFU(購買層) | 導入を具体的に検討している段階 | 導入実績、費用感 | 事例、見積もり、デモ |
図にすると分かる通り、上から下に進むほど対象者の数は絞られていきます。この形を頭に入れておくと、「今どの層に向けた施策を打っているのか」を社内で共有しやすくなります。
3. カスタマージャーニーとの違い
マーケティングファネルとよく混同される概念に、「カスタマージャーニー」があります。両者は似ているようで、見ている軸が異なります。
- マーケティングファネル:見込み客の「人数」が段階を追うごとにどう絞られていくかを表す、量の可視化モデル
- カスタマージャーニー:顧客一人ひとりが、どんな感情でどんな接点(タッチポイント)を通るかを時系列で描く、質の可視化モデル
マーケティングファネル
量
何人が、どの段階で
離脱しているか
カスタマージャーニー
質
なぜそこで
離脱するのか
ファネルが「どの段階で何人が離脱しているか」という定量的なボトルネック発見に向いているのに対し、カスタマージャーニーは「なぜそこで離脱するのか」という感情的な理由の深掘りに向いています。この2つは対立するものではなく、ファネルで量の課題を見つけ、カスタマージャーニーでその理由を掘り下げる、という補完関係で使うのが実務的です。
マーケティングの課題、抱えていませんか?
ウォーカンドでは戦略設計から実行・改善まで一気通貫で支援しています。
4. マーケティングファネルのフレームワーク(3つの種類)
マーケティングファネルには、大きく3つの種類があります。
パーチェスファネル(購買ファネル)
「認知→興味・関心→比較検討→購入」と進む、最も基本的なファネルです。新規顧客の獲得を目的とする場合に使われ、単に「マーケティングファネル」と言うとき、多くはこのパーチェスファネルを指します。
インフルエンスファネル
購入後の顧客が「継続→紹介→発信」へと進む、パーチェスファネルとは逆方向のファネルです。SNSでの口コミやUGC(ユーザーが生成するコンテンツ)を成長の起点に組み込みたい場合に有効で、対象となる人数は段階が進むごとに増えていく(通常の三角形に近い形になる)のが特徴です。
ダブルファネル
パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたモデルです。購入前から購入後までを一気通貫で設計でき、新規獲得と既存顧客のロイヤル化を両立させたい場合に使われます。
| ファネルの種類 | 対象とする範囲 | 向いている目的 |
|---|---|---|
| パーチェスファネル | 認知〜購入 | 新規顧客の獲得 |
| インフルエンスファネル | 購入後〜発信 | 既存顧客のファン化、口コミ拡散 |
| ダブルファネル | 認知〜発信まで一気通貫 | 新規獲得とロイヤル化の両立 |
図|3種類のファネルの形
パーチェスファネル
認知→購入
絞り込む
インフルエンスファネル
購入後→発信
広がる
ダブルファネル
両方を接続
ひし形
5. マーケティングファネルは古いのか?【2026年最新の視点】
冒頭で触れた「マーケティングファネルはもう古いのでは」という疑問に、正面から答えます。
古いと言われる理由
① 購買行動が直線的でなくなった
② 購入後の体験を表現できない
今も有効な理由
① BtoBの長い検討プロセスに合う
② 社内の共通言語として機能する
古いと言われる理由
主に2つの理由が挙げられます。
- 消費者の購買行動が多様化し、直線的に進まなくなったから:SNSや検索を通じて、消費者は認知→比較→購入という一本道ではなく、興味を持った後に情報収集と再検討を何度も繰り返す、循環的な行動をとるようになりました
- 購入後の体験まで表現できないから:従来のパーチェスファネルは購入をゴールとして描くため、リピートや紹介といった購入後の顧客体験を表現しきれません
それでも今も使われ続けている理由
一方で、ファネルという考え方自体が無効になったわけではありません。特にBtoBのように、複数の意思決定者が関わり検討期間が長い商材では、段階ごとに施策とKPIを整理できるファネルの考え方は今も有効です。また、社内で「今どの段階の施策を議論しているのか」を揃えるための共通言語としての価値も失われていません。
2026年時点の関連フレームワーク
ファネルを補完・代替するものとして、以下のような考え方も登場しています。
| フレームワーク | 考え方 |
|---|---|
| フライホイール | 顧客満足を中心に据え、満足した顧客が新規顧客を呼び込む「循環」を描くモデル。HubSpotが提唱 |
| フリップ・ザ・ファネル | 新規獲得を起点にするのではなく、既存顧客の維持・紹介を起点に新たな顧客を生み出す考え方 |
| マイクロモーメンツファネル | スマートフォンでの「知りたい」「行きたい」といった瞬間的なニーズの発生に着目したモデル |
図|ファネルを補完する2026年時点の関連フレームワーク
フライホイール
満足した顧客が
新規顧客を呼ぶ「循環」
フリップ・ザ・ファネル
既存顧客の維持・紹介を
起点に新規を生み出す
マイクロモーメンツファネル
「知りたい」「行きたい」
という瞬間の連なり
従来の一直線のファネルに対し、「循環」「逆転」「点在」という異なる形で購買行動を捉え直す考え方です
結論として、マーケティングファネルは「時代遅れで使えない」のではなく、「単体で全てを説明できるものではなくなった」というのが実態に近い理解です。ファネルで量の変化を捉えつつ、フライホイールやカスタマージャーニーで循環や感情の側面を補う、という組み合わせ方が2026年時点での現実的な使い方です。
6. マーケティングファネルの実務での使い方
最後に、実際にファネルを使う際の基本的な流れを紹介します。
ステップ1:自社の購買プロセスを3〜5段階に分解する
最初から細かく分けすぎず、まずはTOFU/MOFU/BOFUの3段階から始めるのが運用しやすい進め方です。
ステップ2:各段階にKPIを設定する
TOFUならリーチ数やセッション数、MOFUなら資料ダウンロード数、BOFUなら商談化率や受注率、というように、段階ごとに追う指標を決めます。「人数(量)」と「転換率(率)」の両方を見るのがポイントです。
ステップ3:段階ごとに施策をひも付ける
TOFUにはSEO記事やSNS発信、MOFUにはホワイトペーパーやウェビナー、BOFUには事例紹介やデモといった具合に、各段階に合った施策を割り当てます。
ステップ4:数字を継続的に見直す
一度作って終わりにせず、月次などの頻度で各段階の転換率を見直し、最もボトルネックになっている段階に施策を集中させることが重要です。
ファネルの考え方は理解できても、実際に自社のKPIをどう設計し、どの施策を優先すべきかで迷う方は少なくありません。Walkandでは、ファネル設計から施策の優先順位付けまで、実行レベルで伴走支援しています。まずは現状を整理するところからでもお気軽にご相談ください。
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7. まとめ
マーケティングファネルは、1898年のAIDAモデルを起源に持つ、100年以上使われ続けているフレームワークです。「古い」と言われる理由がある一方で、社内の共通言語として、また段階別にKPIと施策を整理する土台として、今も有効に機能しています。
まずは、自社の購買プロセスをTOFU/MOFU/BOFUの3段階に当てはめて書き出してみてください。それだけで、今どの段階に力を入れるべきかが見えてくるはずです。
マーケティングファネルの設計や、KPI・施策の優先順位付けに迷ったら、Walkandがマーケティング組織の一員として実行レベルで伴走します。お気軽にご相談ください。
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よくある質問
マーケティングファネルとセールスファネルの違いは?
マーケティングファネルは認知〜MQLまでを扱い、セールスファネルはSQL〜受注までを扱います。両者はMQL/SQLの境界で接続され、ここの定義を揃えることが部門連携の要です。
BtoCとBtoBでファネル設計はどう違いますか?
BtoCは検討期間が短く感情訴求が中心、BtoBは検討期間が長く論理訴求が中心です。BtoBは中間KPI(MQL/SQL)の段階が増え、ナーチャリング施策の比重が高くなります。
ファネルは何段階で設計するのが正解ですか?
3〜5段階が実務的です。最初は3段階(TOFU/MOFU/BOFU)から始め、運用しながら細分化していくと無理なく定着します。いきなり7段階などに細分化すると運用が回りません。
ファネル分析に使えるツールは何がありますか?
GA4、HubSpot、Salesforce、Marketo、Pardotなどが代表的です。事業規模と既存ツールに応じて選定してください。スタートアップ初期ならGA4+スプレッドシートで十分機能します。
採用マーケティングファネルにKPIを設ける意味は?
応募〜入社まで歩留まりを可視化することで、選考のどこで離脱が起きているかが特定できます。書類通過率や内定承諾率という中間KPIを持つことで、母集団形成だけでなく承諾率改善という打ち手も明確になります。
ファネルとカスタマージャーニーマップは併用すべきですか?
併用すべきです。ファネルで「量の絞り込み」を見て、ジャーニーマップで「顧客感情と接点」を補う。両者を重ねることで、なぜその段階で離脱が起きるのかの理由まで解像度が上がります。











