この記事の要点
- AISASとは「Attention→Interest→Search→Action→Share」の5段階で消費者の購買行動を捉える購買行動モデルです
- AIDMAから「記憶」を外し「検索」と「共有」を加えた、デジタル時代に最適化されたモデルです
- 用語暗記で終わらせず、自社施策の抜け漏れを発見する「診断ツール」として使うのが実務的です
- CMO・マーケ責任者は施策全体をAISASの5段階にマッピングし、空白ステップを潰す視点で予算配分とKPIを再設計します
AISASという言葉自体は知っていても、いざ自社のマーケティング戦略にどう落とし込むかとなると手が止まる。そんな声をよく聞きます。本記事ではAISASモデルを「言葉の解説」ではなく「施策設計のフレーム」として扱います。読み終えた翌日から自社のマーケ施策を診断できる状態を目指します。
麻生 諒也株式会社ウォーカンド 代表取締役
学生時代よりSEO・SNS事業を立ち上げ、個人事業主としてマーケティング領域に従事。個人と並行し、新卒でWEB広告代理店に入社。ブランド領域の広告プランナーとして、提案から運用まで一気通貫で担当する。同領域にて準MVP、MVPを受賞し、独立。2025年、株式会社ウォーカンドを設立。
AISAS(アイサス)とは?5つのステップを30秒で理解
AISASは電通が2004年に提唱した購買行動モデルで、Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有)の5段階で消費者の購買プロセスを説明します。インターネット普及後の「検索」と「共有」を組み込んだ点が最大の特徴で、デジタルマーケティング戦略の基本フレームとして広く使われています。以下、各ステップを順に分解します。
Attention(注意):認知の入口で何を測るか
Attentionは消費者がブランドや商品の存在に気づく段階です。該当する施策はSNS広告、ディスプレイ広告、TV CM、PR露出など。KPIはインプレッション、リーチ、認知率が中心になります。
ここで見落とされがちなのが「誰に届けるか」のターゲティング設計です。広く届ければよいわけではありません。次のInterestに進む確率が高いオーディエンスへ精度高く届けて初めて、Attentionは投資対効果を持ちます。リーチ数だけ眺めて満足するのは典型的な失敗パターンでしょう。
Interest(関心):認知を「気になる」に変える仕掛け
Interestは認知した相手が「もう少し知りたい」と前のめりになる段階です。コンテンツマーケ、動画、インフルエンサー活用、ストーリーズなどが主な施策で、KPIはエンゲージメント率、滞在時間、保存数などを設定します。
注意したいのはAttentionとの境界の曖昧さ。広告クリエイティブが認知と関心を同時に作るケースも多く、どちらの段階のKPIで測るかをチーム内で揃えておかないと評価がブレます。
Search(検索):AISAS最大の特徴と検索行動の設計
SearchはAISASの肝です。AIDMAには存在しなかったこの段階こそ、デジタル時代の購買行動の決定点になります。検索には大きく3種類あります。指名検索(ブランド名)、一般検索(カテゴリ名・課題ワード)、SNS検索(Instagram、TikTok、X)です。
SEO・MEOだけでなく、Z世代を中心としたSNS検索への対策が急務になっています。Googleで調べる前にInstagramのリールやTikTokで「使ってみた」を確認する行動は珍しくありません。検索結果に自社の情報が現れるかどうかが、購入意欲をそのままCVRに変換できるかを左右します。
Action(行動):購入・申込のコンバージョン設計
Actionは購買だけを指すわけではありません。資料請求、来店、問い合わせ、無料トライアル登録なども含む「事業ゴールに直結する行動」です。
具体施策はLP最適化、EFO(入力フォーム最適化)、決済UXの改善、リターゲティング広告など。CVR改善は華やかな施策よりも、フォーム項目を1つ減らす、決済方法を増やすといった地味な打ち手が効きます。Search段階で温まった見込み客を取りこぼさない設計が肝心です。
Share(共有):購入後行動が次のAttentionを生む
ShareはAISASを「直線」ではなく「循環モデル」に変える要素です。レビュー投稿、SNSシェア、UGC、口コミ、紹介プログラムなどが該当します。
ここが重要な理由は、誰かのShareが次の検索者のSearch段階に直接影響するからです。Instagramで検索した先に出てきたUGC、Googleレビューの星4.5、X上での体験談。これらは新規顧客のAttentionとInterestとSearchを同時に動かす燃料になります。Shareを設計しないマーケティングは、毎月ゼロから燃料を買い続けることになるのです。
AISASとAIDMA・AIDA・DECAX・SIPSの違いを比較表で整理
AISASはAIDMAから「Memory(記憶)」を外し「Search(検索)」「Share(共有)」を加えたデジタル時代のモデルです。AIDAは最古の基本形、DECAXはコンテンツマーケ重視、SIPSはSNS時代に特化と、各モデルは登場した時代背景と前提が異なります。自社の商材・チャネルに応じて使い分けるのが正解です。
主要購買行動モデル比較表(AIDA / AIDMA / AISAS / DECAX / SIPS)
主要な購買行動モデルを一覧で整理します。自社にどれを使うべきか判断する基礎資料としてご活用ください。
| モデル | ステップ | 提唱年(目安) | 想定チャネル | 適した商材 |
|---|---|---|---|---|
| AIDA | Attention→Interest→Desire→Action | 1898年頃 | セールス・対面 | 営業・対面販売の基本 |
| AIDMA | Attention→Interest→Desire→Memory→Action | 1920年代 | マス広告(TV・新聞) | 店頭購買の消費財 |
| AISAS | Attention→Interest→Search→Action→Share | 2004年(電通) | Web・SNS・検索 | ネット検索が発生する商材全般 |
| DECAX | Discovery→Engage→Check→Action→eXperience | 2015年(電通) | オウンドメディア | コンテンツマーケ中心の商材 |
| SIPS | Sympathize→Identify→Participate→Share&Spread | 2011年(電通) | SNS | 共感ドリブンのSNS購買 |
AIDMAとの違い:「記憶」が消えて「検索」「共有」が加わった意味
AIDMAからAISASへの進化は、ただ用語が増えただけではありません。本質はマス広告時代と検索時代の購買行動の違いを反映しています。
マス広告時代は、TV CMで見た商品を後日店頭で「思い出して」買う流れが主流でした。だからこそ「Memory(記憶)」が購買のトリガーになります。しかしネット時代は違います。気になった商品はその場でスマホで検索すれば情報が手に入る。記憶しておく必要が薄れたのです。代わりに、検索結果でどう出会わせるか、購入後にどう共有してもらうか、この2点が決定的な要因になりました。
自社にはどのモデルが合う?商材・チャネル別の選び方
判断軸はシンプルです。検索行動が発生する商材ならAISAS、SNS拡散が購買要因ならSIPS、オウンドメディア中心ならDECAX、店頭購入中心の伝統的商材ならAIDMA。
中小企業・スタートアップが最初に取り組むなら、まずAISASを骨格に据えるのが現実的でしょう。検索行動はBtoC・BtoB問わずほぼ全業種で発生するため、汎用性が高いからです。SNSネイティブな商材を扱う場合のみ、ULSSAS(後述)やSIPSを補助線として併用する形が扱いやすい構成です。
AISASを「施策の抜け漏れ発見ツール」として使うCMO視点の戦略設計
AISASは用語暗記のためのものではありません。自社の現行マーケ施策を5段階にマッピングし「どのステップに施策が偏り、どこが空白か」を可視化する診断フレームとして使うのが、最も実務的な使い方です。CMOやマーケ責任者が予算配分とKPI設計に使う具体手順を、ここから提示します。代理店任せでは見えにくい全体構造を、自社の手で掴むための道具と考えてください。
ステップ1:自社施策をAISASの5段階にマッピングする
まずやることは1つ。A4一枚に5列の表を書き、Attention/Interest/Search/Action/Shareの各列に、現在動いている施策をすべて書き出します。広告、SEO、SNS運用、メール配信、CRM、展示会、PR。何でも構いません。
各施策の横に、月額予算・担当人員・主要KPIを並べます。これだけで「AISAS施策マップ」のテンプレが完成します。シンプルですが、これを実際に作っている企業は驚くほど少ないのです。書き出した瞬間に偏りが見えてきます。
ステップ2:空白ステップ・偏りを発見する診断チェックリスト
マップが完成したら、よくある抜け漏れパターンと照合します。
- AttentionとActionに施策が偏り、Search対策(SEO・指名検索広告)が空白になっている
- 認知獲得には予算を使っているが、Share施策(UGC収集・レビュー・紹介プログラム)がゼロ
- Interest段階のコンテンツが不足し、広告クリックからの離脱が大きい
- Searchで見つかってもActionへの導線(LP・CTA)が弱く取りこぼしている
- Action後のフォローがなく、Shareが自然発生に任されている
- 各ステップでKPIが設定されておらず、効果測定が広告のCPAだけになっている
- SNS検索対策(Instagram・TikTok)が抜けている
- BtoBで比較サイト・指名検索広告への投資が手薄
1つでも当てはまれば、そこが伸びしろです。
ステップ3:KPI・予算をAISAS全体で再配分する
空白が見えたら、予算配分の再設計に進みます。中小企業がやりがちなのは「広告偏重」。Attentionにだけ予算が集中し、Search対策やShare促進が後回しになっているケースが本当に多いのです。
再配分の考え方はこうです。Attentionで増やしたリーチをSearchで取り切るには、SEO記事・指名検索広告・口コミ整備が必要。Actionで獲得した顧客にShareしてもらうには、レビュー収集の仕組みや紹介プログラムが必要。広告予算の一部をこれらに振り向けると、CACが下がりLTVが伸びます。
ステップ4:ステップ間の「連続性」を設計する
各ステップは独立した箱ではありません。連続した体験です。Attention広告のクリエイティブとSearch時のSEO記事のメッセージが一致しているか。Action直後のサンクスメールがShareを促す導線になっているか。Searchで読まれる比較記事がActionのLPに自然につながっているか。
具体例を1つ。広告で「初心者向け」を訴求しているのに、検索で出てくるSEO記事が中級者向けの専門解説だと、見込み客は離脱します。クリエイティブとコンテンツのメッセージは、5段階を貫いて一貫させる必要があるのです。
AISASを使った具体的な施策例とBtoB・BtoCでの応用
AISASはBtoCの消費財だけのモデルではありません。BtoBのリード獲得プロセスにも応用できます。BtoCは「SNS発見→検索→EC購入→レビュー投稿」、BtoBは「広告認知→ホワイトペーパーDL→指名検索→商談→事例公開」など、業態に応じて中身を入れ替えれば同じ骨格が使えます。
BtoC(EC・D2C)でのAISAS施策例
典型的なBtoCの流れを具体施策に落とし込みます。InstagramリールやTikTok広告でAttentionを獲得し、UGCや口コミレビューでInterestを高める。GoogleとInstagramの両方の検索結果に自社情報を整備してSearchに対応し、ECサイトで購入というActionに繋げる。購入後はサンクスメール・同梱カード・レビュー特典でShareを促進します。
D2Cブランドで成果が出やすいのは、Shareの設計に手間をかけている企業です。レビュー投稿で次回使えるクーポンを配る、購入者限定のハッシュタグを設計する。こうした小さな仕掛けが新規獲得の燃料になります。
BtoBサービスでのAISAS施策例
BtoBは商談化までの期間が長いため、各ステップの設計が異なります。展示会・LinkedIn広告・業界メディアでのタイアップ記事でAttention。ホワイトペーパー・ウェビナーでInterest。指名検索・比較サイト・口コミサイト(ITreviewなど)でSearch。商談・契約でAction。導入事例の公開・顧客紹介・カンファレンス登壇でShareを促す流れです。
BtoBで特に重要なのが「指名検索される状態」を作ること。一般検索だけに頼ると競合と価格比較され消耗します。Shareの一環として導入事例を出し続けると、業界内で指名検索される土壌ができていきます。
AISASは古い?最新のSIPS・DECAX・ULSSASとの併用
「AISASは古い」と言われることがありますが、結論は時代遅れではなく万能でもない、です。検索行動が発生する商材であれば今も現役のフレームです。一方でSNSネイティブ層の購買行動は、検索を経ずに共感→拡散→購買と進むことも多く、その場合はSIPSやULSSAS(UGC→Like→Search→Spread→Searchのループ型モデル)を併用するのが現実的でしょう。
実務的にはAISASを骨格に据え、SNS比重の高い商材ならULSSASを補助線として重ねる。この組み合わせが、汎用性と現代性のバランスが取れた使い方です。
AISAS活用でよくある失敗と回避策
AISAS活用の失敗パターンは大きく3つに分けられます。フレームを知っているだけで施策が変わらない、各ステップを担当部署が分断して連続性が崩れる、Share段階を放置して新規獲得コストが下がらない。それぞれの構造と回避策を見ていきます。
失敗1:フレームを「知っているだけ」で施策が変わらない
最も多い失敗です。研修で習って終わり、本で読んで終わり。これでは何も変わりません。
回避策はシンプルです。月次のマーケ会議で「AISAS施策マップ」を必ず更新し、空白ステップに最低1つアクションを置くルール化を行うこと。会議のアジェンダに組み込めば形骸化しません。マップを壁に貼る、Notionで全社共有する、といった可視化も効果的です。
失敗2:部署間でステップが分断し顧客体験が崩れる
広告は広告部、SEOはSEO担当、CRMはCS部門と縦割りになっている組織でよく起きます。各部署が自分のKPIだけ追うため、メッセージが一貫せず顧客体験がチグハグになるのです。
回避策は、5段階を横串で見る責任者を立てること。CMOがその役割を担うのが理想ですが、不在ならマーケ責任者か、外部パートナーが全体統括する体制を作ります。重要なのは「ステップ間のつなぎ目」を誰かが必ず見ていることです。
失敗3:Share段階を放置し新規獲得コストが下がらない
新規獲得CPAが下がらないと悩む企業の多くは、Share設計が空白です。レビュー収集、UGC活用、紹介プログラム、これらが次のAttentionとSearchを生む循環構造になっていません。
LTVとCAC改善の観点でも、Shareの優先度を上げる必要があります。既存顧客1人が3件のレビューを書く仕組みがあれば、それは広告予算の何十万円分にも相当する資産になり得るのです。Shareは「あとでやる施策」ではなく、循環の起点として最初から設計すべき項目でしょう。
まとめ:AISASは「知る」より「使う」フレーム
本記事の要点を整理します。
- AISASはAttention→Interest→Search→Action→Shareの5段階で消費者行動を捉える購買行動モデル
- AIDMAから「記憶」を外し「検索」と「共有」を加えたデジタル時代のモデル
- 用語暗記より、自社施策をマッピングして抜け漏れを発見する診断ツールとして使う
- BtoC・BtoBを問わず、業態に応じて中身を入れ替えれば同じ骨格が機能する
- Share段階を循環の起点に据えることで、新規獲得コストが下がりLTVが伸びる
まずやるべき次のアクションは1つ。A4一枚に5列のAISAS施策マップを書き、自社の現状を可視化することです。空白が見えた瞬間、来月の施策設計は変わります。Walk&は中小企業・スタートアップの戦略設計から実行まで、AISAS全体を横串で見るパートナーとして伴走しています。施策の偏りや空白に心当たりがあれば、お気軽にご相談ください。
マーケティングの課題、抱えていませんか?
ウォーカンドでは戦略設計から実行・改善まで一気通貫で支援しています。
よくある質問
AISASは誰がいつ提唱したモデルですか?
AISASは2004年に電通が提唱した購買行動モデルで、電通によって商標登録もされています。インターネット普及後の消費者行動を表現するために、従来のAIDMAを発展させる形で作られました。
AISASは古い・時代遅れと聞きますが今でも使えますか?
検索行動が発生する商材では今も現役のフレームです。一方でSNS中心の購買行動にはSIPSやULSSASを併用するのが現実的でしょう。AISASを骨格に、商材特性に応じて他モデルを補助線として重ねる使い方が推奨されます。
AISASとAIDMAはどちらを使うべきですか?
ネット検索が購買プロセスに発生する商材ならAISAS、店頭購買が中心の伝統的商材ならAIDMAを使い分けます。ただし現代ではほぼ全業種で検索行動が発生するため、迷ったらAISASを選ぶのが汎用性の高い選択です。
AISASのKPIは何を設定すればよいですか?
各ステップに対応する指標を設定します。Attentionはリーチ・インプレッション、Interestはエンゲージメント率・滞在時間、Searchは指名検索数・SEO流入、Actionは申込率・CVR、Shareはレビュー数・UGC投稿数・紹介経由獲得数などが代表例です。
BtoBビジネスでもAISASは使えますか?
使えます。商談プロセスに置き換えれば有効で、Searchは指名検索や比較サイト訪問、Actionは商談・契約、Shareは導入事例公開や顧客紹介に該当します。BtoBでは特に「指名検索される状態」を作るための事例公開とレビュー獲得が重要になります。
ULSSASやDual AISASとAISASの違いは何ですか?
ULSSASはSNS拡散ループを重視した「UGC→Like→Search→Spread→Search」のモデルで、SNSネイティブな商材に適します。Dual AISASは興味の二段階構造(自分ごと化と他人ごと化)を加えた拡張版です。目的に応じて、AISASを骨格にしつつこれらを補助的に併用するのが実務的でしょう。


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